中小企業診断士二次試験──それは一次とはまったく別物でした。
正解がなく、採点基準も見えず、80分という短時間の中で大量の情報を読み、考え、書き切る必要があります。
「知識」ではなく「思考」と「判断」が試される、あまりにも特殊で、残酷な試験です。
当日の会場は青山学院大学。朝から教室には重い緊張が漂い、誰もが静かに答案構成のイメージを作りながら開始時刻を待っていました。
事例Ⅰ(組織・人事)では迷いながらも必死にまとめ、事例Ⅱ(マーケティング)では老舗煎餅店のブランド戦略に向き合い、
事例Ⅲ(生産管理)では“得意分野だからこそ油断できない恐怖”と戦うことになりました。
80分は毎回一瞬で消え、手応えは「良いのか悪いのか自分でも判断できない」。
そんな曖昧な感触のまま、次の科目へ駆り立てられていく──これが二次試験の現実です。
この記事では、試験当日の思考の流れ、判断の迷い、時間との戦い、
そして“教室の空気”まで含めた本番のリアルを、可能な限りそのまま記録しています。
読み終える頃には、あなたも青学の試験室に座っている気分になるはずです。
二次試験当日の朝──緊張と覚悟が交錯する瞬間
「一次とは違う緊張感」記述式試験ならではの不安
二次試験当日の朝、緊張と不安が入り混じる中で会場へ向かいました。一次試験とは異なり、問題は記述式で、制限時間内に大量の文字を書き切らなければなりません。何より「正解がひとつに定まらない」という性質が、最後まで自分を落ち着かせませんでした。
会場で再会した仲間がくれた小さな安心
試験会場には、スクールで顔を合わせていた仲間たちもいました。それぞれが不安を抱えながらも、どこかで「やるしかない」という覚悟をにじませていたと思います。教室に入ると、重苦しい静けさが漂っていました。
第一事例(組織・人事)──80分が一瞬で消える「初動戦」
A社は“中古車販売→焼肉フランチャイズ”の多角化企業
会場は渋谷の青山学院大学でした。独特の緊張感に包まれた講義室で、10時ちょうどに一時限目の試験が始まりました。科目は「組織・人事」。与件文に登場したA社は、中古自動車販売から焼肉フランチャイズへと多角化した企業です。
当時の出題と解答用紙はこちらからご覧ください。
出題 ●
解答用紙 ●

最初の設問は、多角化を進める理由を問うものでした。アンゾフの成長戦略を思い出し、シナジー効果も絡めれば無難にまとめられそうでした。しかし、解答欄は20字のマス目が二つ。書きやすいようでいて、もう一つ何を入れるべきか迷いが残りました。
続くフランチャイズ展開のメリットは比較的平易で、ノウハウ不足を補える点を書けば良さそうでした。ここは落とせません。
迷いが残る解答もあったが、大崩れは避けられた手応え
その後のパート・アルバイトの管理に関する問題では、デメリットを二つ挙げる設問に対し、従業員の負担増とサービス品質の低下を記述しました。さらに非定型業務をどう任せるかという問いでは迷いがありました。正社員登用や意欲ある人材を適切に評価する仕組みを想定しましたが、自信は持ちきれませんでした。
そこへ「BSE問題の発生」という設問が現れます。食品安全リスクへの対応は想定外でしたが、当時の吉野家の対策やメニュー変更を思い出しながら、代替メニューの開発や仕入ルートの再構築を回答しました。売上回復策では、与件文に記載のあった「平日売上の伸び悩み」を手がかりに、平日の来店促進策を記述しました。
最後にA社本社の役割について問われました。ここは人事事例らしく、パート・アルバイト人材の確保・教育、福利厚生制度の整備を中心にまとめました。
気づけば、80分はあっという間に過ぎていました。手応えはあるような、ないような。完璧に答えられた感覚はなく、かといって大きく外したとも思えません。何とも言えない微妙な後味だけが残りました。
第二事例(マーケティング)──老舗煎餅店B社のブランド戦略
B社の本質は“ブランド戦略”だと感じた
二時限目は11時30分からでした。登場したのは老舗の煎餅屋B社です。着席後、まずは各設問に目を通し、その後に事例文を読むのが自分のスタイルです。人によっては逆を勧めますが、私にとっては「設問→事例文」の順が、全体像を体系的に整理しやすいと感じています。
当時の出題と解答用紙はこちらからご覧ください。
出題 ●
解答用紙 ●

与件文を読むにつれ、B社の課題の根幹には「ブランド戦略」が流れていると感じました。
最初の設問は、大手2社の参入後もB社の商品がコンビニ棚を維持できた理由。これは品質面というB社の強みに基づいてまとめられそうでした。
実務経験が役立ち、比較的書きやすい手応え
続くOEM供給のメリット・デメリットは、自分の勤務先でもOEMを扱っていた経験があったため、比較的書きやすい内容でした。
利益率が低い法人向け贈答品がなぜ重要かという問いも、ターゲット戦略や品質の観点を絡めて整理しました。
B級品の「割れせんべい」を安価で販売することについては、ブランド戦略の観点から否定的な方向で回答した方が妥当だと判断しました。
潜在的参入者を二つ挙げる設問では迷いがありましたが、一つはオリジナルブランドを持つコンビニチェーン、もう一つはOEM元の存在に途中で気づきました。
「まずまず書けた」二時限目は、小さな自信につながった
ブランド育成に必要なことでは、品質維持と顧客囲い込みを軸にまとめました。最後の「インターネットを活用した会員組織化」については、メールマガジンや新商品の紹介など、比較的オーソドックスに記述できました。
こちらも80分はすぐに過ぎ、「まずまずの出来」だと感じました。一時限目よりは少しだけ手応えがありました。
第三事例(生産・オペレーション)──製造業だからこそ油断できない
得意と見られる分野だからこそ気を引き締めた
昼食を挟み、14時からの三時限目は製造業の事例です。私は製造業に勤めていますが、「得意分野だろう」と見られがちな反面、慣れが油断につながる場面もあり、むしろ気を引き締める必要がありました。
登場したのはオーダーメイド靴を製造するC社です。強みは品質にあるものの、多くの課題も抱えている企業でした。
当時の出題と解答用紙はこちらからご覧ください。
出題 ●
解答用紙 ●

SWOT・クレーム対応・納期短縮・システム整備を整理していく
最初はSWOT分析。強みは独自の計測装置、6名の熟練技術者、製靴ノウハウ、そして自社ブランドや販売チャネル。弱みはクレーム増加、工程間負荷の偏り、納期とコストです。
クレーム対応では、顧客要望のヒアリング精度を高めるためチェックリストの活用、完成後の試着と微修正体制の整備を提案しました。
応えは二時限目と同程度。大外しはしていない…はず
納期短縮やコスト削減に関しては、多能工化による工程負荷の是正や、デザイン数の絞り込み、インターネット販売の強化を記述しました。
情報システム整備については、顧客の足型データや微修正履歴の管理がリピーター増につながる点を中心にまとめました。
事例IV(財務)の直前──疲労と緊張のピーク
ここでも80分は早く過ぎ、手応えとしては二時限目と同じ程度。「大きく外してはいないが、決定打はない」という感触でした。残るは最終関門、財務・会計の事例D社です。
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第5回:診断士二次試験の絶望と突破口──上位2割の壁に挑んだ日々
第7回:診断士二次試験・最終科目 事例Ⅳ──財務で味わった迷走と極限の80分


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